第九章
――双眸を紅く染めて。
妹のあからさまな変化が凍り付いていた思考を溶かし事態を急速に理解させた。すかさず突き飛ばすとその隙に腹部に残されたナイフを意を決して引き抜いて。
その途端堰き止められていた血液が溢れ出してしまうのを傷口を手で塞いで抑えながら倒れた妹の側を抜けようとする。……が。
「っあ」
注意不足。足首を掴まれて転倒してしまう。
「……兄さん」
ずるり。這う音が迫る音が。
「私たちは双子でしょう?」
逃れられない。
「だったら"ずうっと一緒"よね?」
振りかざされたナイフが。
ぎらりと光沢を走らせたのが最後の記憶。
「憐れ。お兄様はもう少し早く迎えに来られたならこうはならなかったかもしれないのに」
まるで舞台袖の語り手のように。
暗闇に沈んだ場所から双子を眺めながら。
「残酷な結末とは言えまい」
ほくそ笑む。
「双子はやはり"ひとつ"でなくては」
歯車は狂わない。
必ず正しく真なる運命まで。
であれば。
程なく迎えよう。……無垢なる仔羊たちを。