第九章
妹の。安否が気掛かりだった。
思い返すのも痛ましい拷問の痛みに耐え抜けたのもずっとそのことばかり頭の中でぐるぐると考え続けていたからかもしれない。
受け売りではないが唯一無二の存在といっても過言ではないのだ。同じ運命を共にする――
「兄さん」
エレベーターの前に辿り着いたその時だった。
今の今更聞き間違えるはずもない。即座に振り返ればそこにはずっと探していた妹の姿。
「……ルフレ!」
確かめるように目を走らせて怪我一つ見当たらないことを確認するや否や今度は安堵から体の奥底から疲れが溢れ出すような感覚に陥る。
それでも急に倒れたりまではしないが大袈裟に息を吐き出して足を踏み出した。
「無事だったんだ、」
言いかけて。
「え」
恐る恐る視線を下ろせば。
妹の手に握られた鋭利な刃物が。
突き刺して。
「……ね。どうして」
ルフレはゆっくりと頭を擡げる。
「早く来てくれなかったの?」