第九章
重い体を引きずるようにして。
背中が遠ざかっていく。
「……で」
言葉も何も空気を読み取って今の今まで喉の奥呑み込んでいたカービィは遠くなる彼の背中をいつまでも眺めているマルスに抱き続けてきた疑問をぶつける。
「なんで解放したの?」
この部隊に勤める連中に愚問だとは思うが。
「……彼なら」
マルスは視線の先を変えずに呟く。
「もっと早くに送り出していただろうね」
……僕は。
「ぅ、」
傷跡が鋭く痛んで小さく声を漏らした。思わず足を止めて白い巨塔を見上げる。
現時刻が如何程か知れないが変わらずじっと佇む司令塔はその幾つかの階層の照明を消灯しており周辺諸共異様なまでに静まり返っていた。
午前零時は過ぎていることだろう。止むを得ず裏口に回って暗証番号を打ち込み元司令塔の内部へ足を踏み入れる。見慣れたはずの通路も、ぼんやりと誘導灯が示すだけでは酷く不気味で先へ進むのを躊躇してしまう。
……けれど。