第九章
ぼろぼろの服。傷だらけの体。
言葉も交わさずに重い枷は外され、解放されていく。ちらりと視線を送ったが対するその人は何を話すこともなく。
「あのさぁ」
不服そうに口を開いたのはカービィである。
「どうすんのさ」
「裏口から出よう」
即座に返して歩き出してしまうその人の背中を今信じてもいいものか。解放されたはずなのに体は未だずっしりと鉛のように重い。
「はー」
息を吐いて振り返る。
「ついてきて」
エックス邸の裏口は当然裏庭に繋がっていた。そこから歩いて裏門と思しき扉まで辿り着くとマルスはようやく此方に視線を向けて。
「……君なら」
さあっと風が吹き抜ける。
「話してくれると思っていた」
夜の色が満ちた空。
誰かの暗い心の淵を表したような。
「マーク」
遮るようにして強い風が吹き抜ける中。
その人の口の動きにはっとする。
「……失礼します」