第九章



気付けば。意識を手放していたようだった。

呼び戻したのは優しい声などではなく体の芯に響くかのような傷み。思わず叫びそうになるも歯を食い縛って殺したつもりがくぐもった声が口の端から洩れてしまう。

ぼうっと瞼を持ち上げて見詰めた。助けを乞うが為ではなくただそれ以上の行動が許されず。

「ほら。起きた」


鞭により何度も酷く打ち付けられた体はもう既に限界を迎えようとしていた。けれど目の前の人物は悪びれる様子もなく視線に気付くと逆ににっこりと笑ってみせる。

「……夢でも見てた?」

いつの間に。入れ替わっていたのだろう。

マルスは壁に寄りかかり腕を組みながら此方をじっと眺めていた。先程無邪気に鞭を振るってくれたのはカービィの方だったらしい。

「あんたもさぁ」

唐突に。髪を引っ掴まれて。

「懲りないね」


――冷たい目だった。


「墓の中まで持っていくほどのこと?」

小さく息を吐き出して解放する。

「最善だとは思えないなー。話の内容によっては手を貸してあげられるかもしれないのに」

頑なに口を噤む。そんな自分を横目に見てもう一度カービィは溜め息を吐き出すと。

「先に言ったのはあんた達だよ」

――鞭を振りかざす。

「僕たちは仲間だって!」
 
 
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