第九章
……そんな。
驚愕のあまり口元を両手で覆って言葉を失う。
「は、」
恐る恐る口にした言葉は。
「初めから……?」
真実は。
「同じ未来を辿るために……?」
「くくく」
あまりにも残酷で。
「未来は変えられない。断言しよう」
ルキナの体に憑依したベンゼルが指を鳴らすとまるで蝋燭の火にふっと息を吹きかけるように証明が静かに落ちた。その刹那闇の中に浮かぶ幾つもの紅い光に囲われて。
悍ましいものに追い詰められているはずなのに恐怖を感じないのは勘違いなどではなく。
「この舞台の指揮者は私なのだから」
ああ。
なんてことだ。
「私を……引き入れたところで」
「"策の内"だったか」
はっと目を開く。
「その為に引き離したのさ。双子の絆は強い」
虚ろな様子で両脇に立つ仲間に捕らわれながら薄く笑みを浮かべた悪魔と向き合う。
「お兄様が迎えに来られるその時まで」
兄さん。
「……おやすみ。……よい夢を」