第九章
……全てを?
「何を言っているの、ルキナ」
困惑した表情で問い掛ける。
「貴女は運命を変えるため絶望の未来からこの時代へやって来た。……そうでしょう?」
ざわざわと。
「それなのに今更"全てを話す"だなんて」
「くふっ」
吹き出して声高らかに。
「……見せてあげましょうか?」
言うや否や深い笑みを浮かべた彼女は。
自身の服の襟元へおもむろに両手を掛けると。
力を込めて。――引き裂く。
「……!」
思わず目を開いた。
「見覚えがあるでしょう?」
彼女の胸元には。
邪竜ギムレーを信仰する教団を示す烙印が――
「未来。戦いに敗れた私はかの教団にその身を受け渡されました」
ルキナはゆっくりと足を踏み出す。
「もがけど。足掻けど。抵抗虚しく烙印を押し付けられたあの時の絶望は今でも忘れない」
――大柄の男二人に捕らえられ逃げ場は無く。嫌だと零すも聞き届けられず赤々と熱せられた烙印がじっくりと胸元に押し付けられる。
「未来を変えたところで」
伏し目がちに語る彼女を前に。
「その事実は消えないというのに」
ただ。言葉を失う。