第九章
淀んだ空気。荒れる天地。
この世界の在るべき姿を取り戻すべく。絶望の根源へと立ち向かった正義部隊は為す術もなくその半数以上が無惨に殺される。
……それが。
私たちがいずれ避けなければいけない未来。
「……そ」
震える唇から零れ落ちる。
「それだけのために……?」
どうしてか失言だとは思わなかった。
彼女が何の為に未来からこの時代にやって来て何を成し遂げようとしているのかその思いさえ踏まえたとしても。
たったそれだけのために。
肉親諸共、命の危険に晒されようなどと。
「ふ」
――高らかに笑い声が響き渡った。
「ルキナ……?」
確かめるようにして名前を呼ぶ。
「……そうでしたね」
彼女はひと頻り笑った後で。
「あなた達は"まだ"でしたね」
双眸は紅く。
「いいでしょう」
薄い笑みを残しながら告げる。
「……全てを話します」