第九章
きっと睨みつけて拳を握る。
「作戦は私と兄さんが魔術による演出で注目を集めているその隙にミカゲがターゲットを殺すというものだったはず。それなのに」
脳裏に蘇るのは。
魔方陣を突き破って現れた邪竜とその事態こそ平気であるかのように笑みを浮かべる彼女――
「……それが」
ルキナは静かに首を傾けて訊いた。
「どうかしましたか?」
……え?
「今回の作戦で私たちは創造神マスターハンドの捕獲を優先しました。彼らの固有能力であるそのひとつ、創造の力を手に入れる為です」
語る彼女の声は酷く冷めきっていた。
「……聞いていないわ」
「当然でしょうね。作戦を実行するにあたって貴方たちには敢えて本来の作戦内容を告げないまま利用させていただきましたから」
淡々と。
「どうして」
冷静に構えているつもりでも眩暈を感じた。
「そんなことを……」
彼女は呆れたように目を細めると。
「今更言わせるんですか?」
小さく息を吐いて。
「"未来の為"に決まっているでしょう?」