第九章
「ルフレ」
突然呼ばれたのでギクリとした。まさか寮内に幽霊がいるとまでは疑っていないのだが得体の知れないものを相手に怯えるようにして、恐る恐る振り返ってしまう。
「た、」
そこに居たのは。
「……隊長?」
微笑を浮かべ問い掛けに応えるのは紛れもないロックマンその人だった。……それにしては先程まで気配ひとつ感じ取れなかったが。
「遅かったじゃないか」
、え?
「おいで。皆が待っているよ」
確かに自分の傷は全く深いという話でもないがそれでも何かもっと他に伝えるべきことがあるのではなかろうか。などといった疑心を余所に彼の人は背中を向けて歩き出してしまう。
「た……隊長!」
向かう先にはエレベーターがあった。
「話が見えません……説明してください!」
その指先がエレベーターの昇降ボタンに触れる直前でぴたりと止まる。
「……君は、せっかちだな」
ゆっくりと振り向いたその人の双眸は。
「なら、早急にご案内しよう」
悍ましく紅く――