第九章
僕が。……見捨てられた?
言葉を失っている様子のマークを見てカービィもようやく鎖から手を離した。解放されても尚表情に大きく出ないものの動揺を隠しきれないらしく視線を落としながら呆然として。
……あの時。
何も聞かされていなかったのは妹も同じだ。
ずっと共に過ごしてきたんだ。
妹が……僕を見捨てるはずがない。
「ルフレは」
硬直が解けたかのようにぽつりと呟くマークに二人は思わず顔を見合わせる。
「いなかったけど?」
脳裏に浮かぶ電子回路が蒼い光を走らせていくようなイメージで幾つもの可能性やそれが生み出す結果が画像となり取り上げられて。最中、不意にその内のひとつが光を走らせている中で漏電を起こしフラッシュバック。
ザワザワと胸が騒ぐ。
ある記憶の中で時間が巻き戻っていきそれまで見落としていた"欠陥"に行き着く。
僕が。取り残された理由。
「……マルス王子!」
先程までの様子とは打って変わり何処か焦りを滲ませた表情でマークは声を上げる。
「僕を解放してください!――今すぐに!」