第九章
――悍ましい、巨大な竜を象る黒い影。
今日の内に起こりその目にした出来事とは到底思えないような迫力だった。けれど竜はまるでその他の獲物など目にも映らない様子で目前に捉えた双子を蹂躙し、大きく口を開けたが。
阻止するべくして駆けつけたのは。
「あの時。彼らはまるでその瞬間を待っていたかのようだった」
マルスはひと呼吸おいて。
「……君なんかには目もくれずに、ね」
自分を狙ってミカゲが現れたのは確かだったがあわよくばといったばかりかそれ以上に何処か様子がおかしかったというのが気掛かりだ。
彼らは何を企んでいるのだろう。
「それで」
ルーティは思い出したように口を開く。
「その、マークをマルスに任せるという話とはどういう関係が……?」