第九章
それを聞くと何故か沈黙が訪れた。かといって最悪の事態を予想させるような重苦しい雰囲気でもないので結果として事情を察せないまま、頬を人差し指で掻き答えるのを躊躇うマリオを怪訝そうに見つめる。
「あー」
マリオは目を泳がせていたが。
「何処まで話すって?」
そうして視線を向けた先でマルスはカービィの隣に腰を下ろした。
「ルーティ」
静かに呼んで見据えると。
「心して聞いてほしい」
緊張感を招く前置きに当然のことながら身体が強張った。彼の指示を受けて今回パートナーであるウルフは同席していない形だがこんなにも心細いものだとは。不安に駆られる時、言葉を無くしている時パートナーの存在に自分はどれだけ助けられていたことだろう。
気付けば自分の膝の上で拳を握っていた。当然不安は拭い去れないまま静かに息を呑んで目を見張る中マルスは言葉を紡ぐ。
「君は命を狙われている」
「……うん」
余計な口は挟まずに頷いて返す。
「彼らが最も恐れている"絶望の未来"が深く関わっているらしい。ただし同じX部隊である僕たちや他のメンバーはともかく彼らが狙っているのはただひとりルーティだけ」
眉を顰める。
「かと思えば今回の事件だ。ダークシャドウと交戦中である僕たちを差し置いて彼らは何故かマスターハンドを狙った」