第一章



靴音、高らかに響かせて。

赤目の部下を引き連れ先頭を歩く。歩く。


いつか見た父の目と同じ闘志をその目に宿して。


「うちの我が儘王子も無事、反抗期か」

扉が音を立てて閉まったところでマスターが呟いた。

「父親にでもなった気分?」
「まさか。……父、といえばあの男がレイアーゼに来ているらしいな」

ふわりと浮遊しながら接近して、クレイジーは嫌そうな顔をした。

「なんで?」
「どうだったかな」
「あいつ苦手なんだよね」
「同感。奴には他にあるような愛嬌といったものが皆無だ」

玉座の上から、此方も浮遊して覗き込む少年が一人。紫の髪が垂れた。

「……なんのはなし?」


右は青、左は赤のオッドアイ。幼い風貌。創造神と破壊神――その両方の能力を同時にその身に宿し“この世界”に生まれ落ちた禁忌の存在。


「お前は知らないだろうな」
「こわいひと?」
「僕たちでも手に負えない野蛮人だよ」

タブーは首を傾げて。
 
 
43/48ページ
スキ