第一章
靴音、高らかに響かせて。
赤目の部下を引き連れ先頭を歩く。歩く。
いつか見た父の目と同じ闘志をその目に宿して。
「うちの我が儘王子も無事、反抗期か」
扉が音を立てて閉まったところでマスターが呟いた。
「父親にでもなった気分?」
「まさか。……父、といえばあの男がレイアーゼに来ているらしいな」
ふわりと浮遊しながら接近して、クレイジーは嫌そうな顔をした。
「なんで?」
「どうだったかな」
「あいつ苦手なんだよね」
「同感。奴には他にあるような愛嬌といったものが皆無だ」
玉座の上から、此方も浮遊して覗き込む少年が一人。紫の髪が垂れた。
「……なんのはなし?」
右は青、左は赤のオッドアイ。幼い風貌。創造神と破壊神――その両方の能力を同時にその身に宿し“この世界”に生まれ落ちた禁忌の存在。
「お前は知らないだろうな」
「こわいひと?」
「僕たちでも手に負えない野蛮人だよ」
タブーは首を傾げて。