第九章
嘲り見下すその紅い目に咄嗟に飛び出しそうになる悪態を今回ばかりはぐっと呑み込んで眉を顰める。同時に苛立ちも募るがそれを悔やんだところで自分はもう取り返しのつかない行動に出てしまっているのだから。
「……お前はどうしたいんだよ」
毎度のことながら全て知り得ていながら情報を控えさせている凡そ上司とは思えないクソガキっぷりに不快感を滲ませながら訊くと浮かべていた笑みをすっと消して。
「どうしようかな」
心底詰まらなそうに空気が冷める。
「僕は奴等のこと泳がせてみてもいいかなって思ってる。でもお前はそうじゃないだろ?」
スピカの眉がぴくりと動いた。
「そこはお前に任せちゃおっかな」
何処までが"シナリオ"なのか。
そういうことだよね。
……兄さん。
「苦情は受け付けねえぞ」
「ふふ。いいよ」
そうして彼は口角を吊り上げる。
「好きにしちゃって」