第九章
……兄さん。
ぼんやりと彼の者を想う。あの時どうして兄は事態を先読んでいたばかりではなく飛び出せば間に合った筈の手さえも視線を刺して制止させ抵抗のひとつも見せないまま受け入れたのか。
これも、絶望の未来と関係が?
そうだとしても。
片方が欠けるだなんて。
双子にとってそれ以上のリスクは無いのに。
「お前さぁ」
クレイジーは漸く口を開いた。
「自分の父親が今なにやってるか知ってる?」
「……何だよ」
「第四正義部隊の管理下」
スピカは思わずギョッとした。
「だよねぇ」
声も出てこない。
「自分の親友疑う前によく調べたら?」
クレイジーはくくっと笑って。
「ほんと。信じるのが下手なんだから」