第八章
……あの時。スピカは撤退を優先した。
いつまでも呆気に取られ続けている僕を放って命令を優先させた。たかがそれだけのことだろうが撤退する直前に見せた何かに納得がいってないかのようなあの横顔が忘れられない。
僕らにとっても彼らにとっても。
不測の事態が連続している?
「ルーティ……」
心配そうにフォックスが名前を呼んだ。
ゆっくりと瞼を閉じる。
考えろ。
「……僕は」
その時だった。
「ルーティ!」
瞼を開いて顔を上げる。声を上げて駆けてきたのはロイを先頭においた剣士組だった。
「うわっ派手にやられたな」
側に寄るなり辺りの惨状に苦虫を噛み潰したかのような顔をする。容赦のないスピカの猛攻は地面を抉り建物を崩しまるで嵐のようだったと被害者のような口振りで語れるが。
「どうしたの?」
攻撃が激しかったのはスピカだけに限らない。只の心配性なら有難いがそれ以外の事情があると見て怪訝そうに尋ねた。
「いや……」
振り返ったロイが視線を送った先でその問題を抱えた人物はゆっくりとした足取りで。
「……!」
「俺たちも」
ロイは困惑を滲ませた表情を浮かべながら。
「状況がさっぱりで……」