第一章



何から何までお見通しだ。


――付け込まれる。


「あんた達が逆らえば、リーダーの首が飛ぶ」

拘束が解けたのかスピカは糸が解けたようにその場に座り込んだ。

「脅しじゃないよ? 替えはいくらでも造れるんだからさ、こっちは」

案じるダークウルフの傍でげほげほと咳き込む。

「だから、言っただろ?」

クレイジーは嫌みたらしく人差し指を唇に添えて繰り返した。

「――失いたくないものの為に暴れろ、って」


いつ嵌め込まれたかも分からない。

けれどそのくらい、生かすも殺すも容易ってことなんだ。


……奴らにとっては。


「分かった」

ようやく落ち着いた頃、スピカはぽつりと言った。

「あんたらを優先して行動する」
「さっすが」
「ただし。好きにはさせない」

クレイジーの満足げな顔から笑みが消えた。

「……俺たちは王に言われるがまま動くチェスの駒じゃない」

スピカはゆっくりと立ち上がり、双子を背にして鋭い視線。

「最後にあるのは、自分たちの意思だ」
 
 
42/48ページ
スキ