第一章
何から何までお見通しだ。
――付け込まれる。
「あんた達が逆らえば、リーダーの首が飛ぶ」
拘束が解けたのかスピカは糸が解けたようにその場に座り込んだ。
「脅しじゃないよ? 替えはいくらでも造れるんだからさ、こっちは」
案じるダークウルフの傍でげほげほと咳き込む。
「だから、言っただろ?」
クレイジーは嫌みたらしく人差し指を唇に添えて繰り返した。
「――失いたくないものの為に暴れろ、って」
いつ嵌め込まれたかも分からない。
けれどそのくらい、生かすも殺すも容易ってことなんだ。
……奴らにとっては。
「分かった」
ようやく落ち着いた頃、スピカはぽつりと言った。
「あんたらを優先して行動する」
「さっすが」
「ただし。好きにはさせない」
クレイジーの満足げな顔から笑みが消えた。
「……俺たちは王に言われるがまま動くチェスの駒じゃない」
スピカはゆっくりと立ち上がり、双子を背にして鋭い視線。
「最後にあるのは、自分たちの意思だ」