第八章
肩を上下して息を繋ぐ。直前まで激しい剣戟を繰り広げていた剣士達は今まさに己の影と睨み合っていた。彼方で何かあったようだが生憎のこと確認している隙も与えられない。
「はいはぁい」
と。宙に浮かんでカービィと睨み合いながらも片手で剣を弄んでいたダークカービィが何者かに向かって軽薄な声を返した。すると途端に緊迫としていた空気が緩やかな流れへと変わり、影達は次々と己の剣を鞘に仕舞う。
「何のつもり」
「撤退だってさぁ」
ダークカービィは答えた。
「残念……もう少しで殺せたのに」
「簡単にくたばっちゃつまんねェだろォ?」
彼らは口々に言うが残念ながら応えてやる体力さえ残されていない。それでも少しずつ呼吸は整ってきたがそれが事実なら今は発言を控えて見逃した方が良さそうだ。
「チッ」
舌打ちをして。ダークリンクは肩に担いでいたその剣を此方の動向を見て緊張の糸を解き息をついていたリンクに素早く向ける。
「いいか」
紅の双眸に殺気は失せず。
「テメェらは生かされたってだけだ」
見据えて紡ぐ。
「……忘れるなよ」
やがて自らが真っ黒な影と化して体の端から空気に溶け出すかのように消失させながらも最後まで双眸の紅を残しながら。
「足下にはいつも影が有ることを――」