第八章



これが、本当に僕たちの運命なら。

……何処から。何処までが?


我が目を疑ったのは誰も皆そうだった。

邪竜を象る黒い影の放った紅い光線は次の瞬間爆発と共に打ち消される。黒煙は晴れるもそこには変わらず少女の体が横たわり、かといって正義部隊の何者かが今の今更かの企みを阻んだという話でもない。

「え」

風に青い髪が揺らぐのを確かにその目で捉えて少年は小さな声で思わず呟く。

「兄さん……?」


これまで事態を愉しげに見下すのみだったかの創造神マスターハンドの思考を一変させて突き動かすだけの理由があっただろうか。大多数が状況を掴めないまま邪竜を象る黒い影は不服を述べるかのように咆哮する。

けれど当然の如く物ともせず風に吹かれて靡く髪さえ耳にかけるような余裕でマスターは目を細めて邪竜の影を見上げるとその姿をゆらりと揺らして。次の瞬間蝋燭の火が掻き消すようにその姿を消すと邪竜の影の目前へ。

右目が蒼く瞬いた。するとマスターの胸の前に青い光の玉が生まれてそれが眩いばかりの光を放ち、邪竜の影は苦しみ呻くように体を大きく幾度か捩らせたのち黒い粒子となり消滅。

さらさらと消えゆく中でそれまで囚われていたマークの体が地面に落下した。然れど目覚めぬ彼を見下ろしていたがある変化を肌に感じ取り小さく目を開いた。その直後だっただろう。

――マスターを囲うようにして四方に赤紫色の魔方陣がぼうっと浮かび上がったのは。
 
 
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