第八章
パキ、と。
何かの割れる音がした。
「え」
次の瞬間だった。
魔法陣を突き破るようにして漆黒の光の柱が天に向かって一直線に伸びる。吹き荒れる風は先程までのものとは比べ物にならないほどに強くぎゅっと目を瞑って耐える他なかった。
それに加えて。
地に響くような呻き声。
まさか。
「……ルフレ!」
逸早く危機を察したマークは彼女が何か応えるよりも先に力強く突き飛ばした。事態も上手く呑み込めないまま地面を転がったルフレが顔を上げると漆黒の光の柱はみるみる内に光というものを失い、後にはまるで電気のように白い閃光を散らす黒い柱を残して。
あれはいったい何?
覚えがあるはずもなく混乱する。
私たちは彼女の指示通りに実行しただけ。今度こそ目標を達成する為に私たちの名に傷のつかない最善のタイミングで。
ただひとり。
その未来を知っている彼女に――
「ふふっ」
ルフレは小さく目を開いた。
「残念です」
恐る恐る振り返る。
「私が見た未来の通りになってしまいました」