第一章
「忘れるなよ」
マスターは口元に笑み浮かべ言った。
「それがある限り、お前は逆らえない――」
きっと睨み銃を構えたのはダークフォックスだった。
――銃声。
けれど次の瞬間ダークフォックスは驚いたように目を開いていた。
自分はいつの間にか“自分の頭に”銃口を突き付けていたのだ。それが引き金を引く直前に気付いてギリギリ逸らし、結果としてこめかみだけ掠めた。
ふと視線を遣ると。玉座の後ろで紫の髪が密かに揺れて。
「お前たちもその限りではない」
「……実力行使ですか」
「当然だ。これからの俺たちの計画を無駄にさせてもらっては困る」
「我々が信用ならないと」
「愚問」
マスターは顔色ひとつ変えずに答えた。
「人間と同じく知能を働かせ、トップクラスの戦闘能力を誇る集団組織……それがお前たちだ。それだけの力を持って寝返る羽目になったら今度此方が不利だろう」
「いわゆる予防線? あんた達のこと、頼りにしてるんだよー?」
ふっとクレイジーの姿が消えた。――かと思うとダークフォックスの目の前に浮遊した状態で現れ、左手を後ろにずいと顔を寄せて、赤い瞳に捉えて笑み。
「……だからあんた達を従えるにはそいつに首輪を付けるのが利口ってわけ」