第八章
放たれる雷撃。ウルフの声に従ってひと先ずは横に飛び込んで躱す。もう一度説得を試みようと口を開くもすぐに次の雷撃が放たれた。
足下に撃ち込まれた其れは砂煙を巻き上げる。身を庇うようにして構えていた腕を解いて左右に視線を走らせたが気配を感じて正面からの攻撃に備えれば読み通り拳が飛んできた。
勢いを乗せたそれは予想以上に重く靴の裏を擦りながら砂煙の外へ押し出される。すると顔を上げるより早くスピカは後方へ大きく飛び退き未だ立ち込める砂煙の中へ。直後に黒の雷撃が乱雑に砂煙の中から放たれたが最後には砂煙を吹き飛ばしスピカが飛び出してきて。
「……何やってやがる!」
繰り出される蹴りも拳も全て防御で掬っていくルーティにダークウルフと戦闘中だったウルフも遂に痺れを切らせて声を上げる。
「このままじゃ埒が明かねえ!」
言いたいことは分かってる。
「……でも!」
その時だった。
「わあああんっ!」
――子供の泣き声。思わずそちらを振り返ると小さな男の子が泣きじゃくっていた。いったいどんな理由でそこにいたのか問い質す術も。
「ルーティ!」
瞬時に引き戻されて反射的に回避行動に移る。
……それが間違いだった。