第八章
甲高い金属音が鳴り響いた。
遂に剣は弾かれ万事休すと思わず目を瞑ったがいくら待っても襲ってこない痛みを不審に感じてマルスはそろそろと瞼を開く。
「一国の王子様が情けないじゃん?」
人より軽薄なこの声は。
「は」
マルスは小さく笑みをこぼす。
「……遅すぎ」
ふん、と鼻で笑う。
流石は主人公様というわけだ。この土壇場でお仲間さんに駆けつけてきてもらえるとは。
「あたた……来ないのかと思ったよ」
「来なくてもよかったんだがな」
「悪い冗談だよ」
そうして言葉を交わしながらゆっくりと立ち上がる彼をスピカは見つめていた。体勢が整い視線に気付いたのかその目が此方を向くと分かりやすく息を吐いて。
「あのままくたばるのかと思ったぜ」
「スピカ……どうあっても話を聞いてはくれないみたいだね」
「愚問。お説教はもう聞き飽きたんだよ」
ルーティは顔を顰めた。
「お願いだから理由だけでも」
黒の閃光が迸る。
「来るぜ! ルーティ!」