第八章
舌を打って踏み込み、押し返す。体勢が傾いたところ後ろに引いた剣を突き出せばそれは見事腹を突いた。けれどダークシャドウの名が語る通りそのあいては特性を生かして体をたちまち黒く染め上げて煙と化して消えてしまう。
「っ、!」
振り向くより先に赤い髪が揺れる。視界の先で先程まで剣を打ち合っていたその影の剣を受け止めるのはロイだった。
「……マルス! 油断するなよ!」
言うや否や別の剣が正面から飛んでくるのでは口論の余地もなく眉を顰めて打ち返す。
「分かっているさ!」
次から次へと。複数人で向かってくる姿を捉え牽制の為に青い雷撃を放つも、ここまで体力を消耗しすぎたせいか途切れてしまう。
止むを得ず向かってきたその一人の蹴り技を腕を交差させて防ぎ即座に蹴り返したがその隙を見計らっていたかのようにしてもう一人が懐に飛び込んできた。そうして気付いた時にはもう遅く強烈な一撃が腹部に叩き込まれる。
「ッぐ!」
蹴り飛ばされたルーティはまるでボールのように地面を跳ねて転がった。咳き込みながら体を起こそうとするも鉛のように重くて。
「ス、ピカ……」
地面を踏む音に顔を上げれば。
「……終わりだ」