第八章
「――やれやれ」
ぎくりとした。
「今宵は客人の多いことだな」
此方の心情を知ってか知らずか。ふっと笑ってロックマンが口を開いた。
「お邪魔しましたか?」
「いいや。ちょうど終えたところだよ」
思わず振り向く。
「……マークさん?」
話はまだ終わっていない。けれど続けて話せるような環境ではなくなってしまった。マークは息を呑むのと同じように言葉を呑み込むと。
「……そうだね」
浮かべた笑みは憂いを帯びた。
拭い去れない思いを胸に仕舞い込んだままでは笑えるものも笑えない。
「部屋に戻るよ」
マークは踵を返して立ち竦むルキナのすぐ横を抜けると扉へ向かいドアノブに手を掛けて。
「おやすみ。……二人共」
……、もう少しだったのかな。
扉を背にして小さく息をついた。彼女の介入が無ければ説得できていたのかもしれない。とはいえ引き返してもうひと押しというのも意地が悪い気がする。
ちらりと扉を見遣って。……それにしてもこんな遅くに何の用事だったと言うんだろう。
このまま聞き耳を立てるのは流石に気が引けるので扉から離れる。そうしてマークはその扉を振り返ることなく自室へ足を運ぶのだった。