第八章
隠すつもりはなかった。こんな夜更けに珈琲を初めとした差し入れがあるわけでなければ何か見せたい書物があるでもなく。最初から此方の意向に気付くと分かっていたのだ。
「……ロック」
マークはゆっくりと口を開いた。
「もう、辞めにしないか」
――絶望の未来は"必ず"訪れる。
歓迎式典が行なわれる数日前。突然自分たちの前に現れた少女は語った。
何もかもが道理にかないすぎる少女の話は最も信じる他になく。予告されたその時を密かに圧として胸の内に抱えながら望まない結末を回避するべく最低限のものだけ守り通して。
分岐点は幾つかあった。それでもそのチャンスはそうなる運命に従うばかりだった。
殺せない。
このままでは、変わらない。
「諦めろと言っているんじゃない」
マークは言葉を選ぶようにゆっくりと話した。
「ただ。やっぱり見ていられないよ」
出来る全てを尽くして。
それで迎えた結末ならそれでいいじゃないか。
築いてきたものや築いていくものが。
全て"運命"では余りにも救われないから――