第一章
「あんたはどうしたいの?」
不意に話を振られてスピカはぴくっと小さく肩を跳ねた。
「……俺は」
密かに拳を握る。
「こっちの作戦に乗じてあいつを殺そうとした下衆な根性が気に入らない」
くっと眉を寄せて。
「敵だろうが味方だろうが関係ねえ。見つけ次第、潰す」
マスターとクレイジーはふっと笑みを浮かべた。
「――正解」
連なる壁燭台の内一つの火が吹き消されるようにして消えた。
「堅苦しい御託なんてものはいらないんだよ」
「必要なのは、人を慈しみ想う心。即ち、愛だ」
スピカはゆっくりと顔を上げる。
「もっと我が儘になっていい、貪欲でいい」
火が揺れる。影が揺れる。
「欲しいものの為に尽くせ。失いたくないものの為に暴れろ」
声が響く。
「それが人間だろう――?」