第八章
放たれた黒の雷撃が障壁に被弾する。雷撃は障壁の効果により蒸発――けれど感情に任せて放ったそれの威力は凄まじく被弾した箇所に僅かな黒煙と威力を失った電気の粕を少量残して。
「言い切ったねぇ」
「御立腹だな」
口々にマスターとクレイジーは笑った。
「兄さんも酷い事をするね」
クレイジーは脚を組んだその上で頬杖をつく。――彼らは上空を浮遊していたのだ。
「この程度で破綻する繋がりなど脆いもの」
目を細めて笑みを深める。
「いずれ絶たれる繋がりならばそのきっかけをくれてやったまでだ」
クレイジーはくすくすと笑って。
「絶たれるのが縁だけならいいけどねぇ?」
紅い目が好奇心に疼く。
「さて。口より手が出る男だ。お前に似て」
「失礼しちゃうな。あんなクソ餓鬼と一緒に」
……はたと。
「ようやくお出ましか」
マスターはニヤリと笑った。
「もしかして」
「ああ」
頷く兄の真の狙いに少しだけ驚いたような顔をしてみせて視線を戻す。
「ふぅん」
ハイエナ共が。
「随分と立ち直りの早いことで」