第八章



合図に従って黒い影たちが飛び出す。

「っ……撤退しよう! ルーティ!」
「う、うん」
「そうはさせませんよ」

次の瞬間には攻撃が降りかかる。少年の目前に飛び込んだ男が如何にか一撃を防いだが。

「どうしてこんなことを!」

もう一度叫んだ。

「今の我々には正当な理由がある」

その影はニヤリと笑って。

「怒り、哀しみ……様々な感情が溢れて止まず思考を蝕む。こんな感覚は初めてなんです」

はっと目を開いた頃には遅く、それまで攻撃を防いでいた男は視覚からの奇襲により蹴り飛ばされてしまった。地面を長く跳ねて転がるより先に受け身を取れたが隙を晒してしまった。

守るべき相手の隙を。

「ルーティ!」

攻撃の刃は目前に。

「さぁ。――存分に殺し合いましょう?」


天空大都市レイアーゼ。奇跡的にも都心より大きく外れている閑静な住宅地にて少人数のメンバーを連れ歩いていたルーティは思いも寄らぬアクシデントに出くわしていた。

それが――敵対組織『亜空軍』所属。偽物集団ダークシャドウによる奇襲だったのである。

「っく……!」

あちらは総出であるのに対して此方は前述した通りの少人数。圧倒的不利であるからには撤退が最も好ましいのだがその隙も窺えない。
 
 
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