第七章
静かな風が吹き抜ける。
「……とむらい?」
「お葬式のことですよ」
あまりに無知が過ぎるが元より辞書を引く性分ではないのだから仕方ない。
「それって、人間がすることだろ?」
ダークフォックスは怪訝そうに続ける。
「土に埋めたり水に沈めたり。けど俺たちは運良く人間と同じ機能が備わったってだけで人間じゃない。幾らでも替えの利く人型兵器だ」
ぱちぱちと火が音を立てる。
「なのにどうしてそんな真似を」
「……本物だからだ」
マスターは答えた。
空も大地も生きとし生けるもの。
この世界の全ては等しく創造の神たるこの俺の愛し子。それをお前たちは本物だ偽物だなどと区別するが俺に言わせてみれば皆同じ。
「……命に。偽物なんてものはない」
水を打ったような静けさが訪れた。
それと同時に何故だか時が止まったかのような感覚にさえ陥った。
「体の中を流れる血が偽物だと思う? 鼓動を打つ心臓が偽物だと思う?」
続けてクレイジーが口を開く。
「世間における常識と少し違うってだけで」
はっきりと。
「同じ生き物なんだよ。お前たちは」