第七章
すん、と鼻をつく。徐々に視覚が情報を正しく捉え始めて脳に信号を送ってくる。
赤い血の色。血の匂い。
気付けば足を踏み出していた。
誰かが遠く叫んでいたような気もする。けれどその時ばかりはより詳細的な情報を得るために歩を進め、草花を踏みつける音だけが空っぽの頭の奥にまで響いてきて。
程なくして迎える。
当然のように理解できなかった。
「なんだよ……これ……」
花園を赤々と彩って散らばる肉片。臓器。
……欠片。かつて"彼ら"だったもの。
不思議と吐き気は襲ってこなかった。それとも或いはあらゆる感情が混ざった硬直が解けたら襲ってくるのかもしれない。
「リーダー」
ただ呼ばれただけであるにも関わらずスピカはびくっと肩を揺らした。