第七章
……小さく。
息をついて目を伏せる。
「よろしかったのですか?」
そんな彼を見兼ねて男が声を掛けた。
「お声掛けしなくて」
本当に、たまたまだったんだ。
あいつらが同じデパートに来ていたなんて。
「いいんだよ」
そう返すのはスピカだった。
「……別に」
こんな時だからこその息抜きである。
ダークシャドウのリーダーを務める彼も今回ばかりは単なるプライベートでこの場所を訪れていた。それだというのに出掛け先で幼馴染みとまさかの遭遇。ただし此方が一方的に見つけたという話であるのが全世界を巻き込んだ現状況において不幸中の幸いとも言うべきか。
「今の俺たちは敵同士だ」
自分自身、言い聞かせるように。
「……仲間じゃない」
尚も気にかけるダークウルフの視線から逃れるようにして背中を向けた。
「リーダー」
遮るようにして。
無機質な着信音が鳴り響いた。