第七章
そうして微笑みかけるものだから意外も意外だった。戸惑いがちに頷いて返したものの気掛かりで仕方ない。
……“あの”ロックマンが?
気付けば距離が空いていた。すれ違う人々の楽しげな声が遠退いて互いの靴音だけが冷たく響く。
正義の一色に染められた鋭く尖った堅い意志。人々の安寧を約束する守りの盾より如何なる理由があれ決して揺らぐことなく悪を断ち切る攻撃の矛。
脳裏に蘇るのは無残にも叩き伏せられた正義の戦士たち。もしかしてあの時矛を折られたのと同時に強い意志も何も消え失せてしまったのではないのだろうか。
――敵うはずがない、と。
花弁を散らされた花のように絶望して。
「ロックマン!」
気付けば、咄嗟に呼び止めていた。
何処へ離れていく筈もないだろうがそれでも後悔だけはしたくなくて。