第七章
「ありがとうございます!」
演説を終えた男が舞台を下りていき、人だかりも散らばってきた頃。宗教団体の一員と思われる女性が嬉々とした表情を見せて駆けつけてきた。
「お礼を言われるような行いでは」
「いえいえ。我々としても理解のある人が一人でも多くいらっしゃることは大変喜ばしいことです」
宗教団体とは一概に言っても、頑として譲らない狂い果てた崇拝的思考を除けばただの変わらぬ人なのだ。こうして嬉しそうに語る様子を眺めているとまさか対面している自分たちこそ愛し讃えている彼らと長く敵対しているだなんて、口が裂けても言えたものか。
「宜しければ此方の用紙もご覧になってください」
そう言って差し出されたのは紛うことなき勧誘の案内。何度だって繰り返すが自分たちは敵対しているのである。
「我々は神の子である貴方たちを心より歓迎しております」
女性は最後に深く頭を下げると次に狙い定めていたのであろう若い男女のペアの元へと走っていってしまった。
「熱心なことだ」
ロックマンは呟いた。しかしその用紙をくずかごへ放り込むでもなく綺麗に折り畳むとショルダーバッグの中へ。
「……行こうか」