第七章
珍しくもない光景だった。
特にここ最近は宗教団体による演説と勧誘が目立っている。どれも敵対組織亜空軍の主将であるマスターハンドとクレイジーハンドを讃えるものばかりで此方としては何ひとついい気がしないのだが。
「今こそ。神々にこの世界を返そう」
何よりタイミングが悪い。
せっかく良い雰囲気になってきたというのにこれでは台無しじゃないか。僅かに顔を顰めるルーティは隣の彼の様子を窺うのが怖かった。肌に感じる気まずい空気にどう切り出して此処から離れようか考えを巡らせていたその時。
「……!」
拍手が鳴ったのだ。
それも。……すぐ隣から。
拍手の波は広がり喝采となった。ロックマンは何故か口元に小さく笑みを浮かべこの演説を歓迎しているかのようで。
呼び起こされるのは彼の正義としての心構えやその言動。歓迎式典での演説は今もまだ記憶に色濃く残されている。
……デモ団体鎮静化作戦。
あの時、思い知らされた彼の氷のように冷えきった意志は忘れもしない――