第一章
澄ました顔で玉座に悠々と足を組んで座る青髪の少年……彼は“この世界”の創造神マスターハンド。その傍ら、玉座の肘掛けに座った赤髪の少年が破壊神クレイジーハンド。二人は正真正銘双子の兄弟であり、ある点を除けば鏡写しの瓜二つ。
――それが兄のマスターは左腕と左目を欠落し、対照的に弟のクレイジーは右腕と右目を欠落しているという点。
様々な事情が複雑に絡み合って現在に至るこの双子は兄がよく出来た創造の天才にも関わらず新たに欠けた目や腕を作り出さない。どのような理由を述べるにしてもまず第一に互いを想い合う歪んだ愛がある。
それ大前提で語るなら理に適っても到底理解は出来ないだろう。
「……はい」
ダークファルコ自身はそう笑ってもいないようだった。
「率直にお伝え申し上げます。『X部隊』リーダーのルーティ・フォンが何者かに命を狙われたようです」
案の定、スピカが慌てて振り返った。
「……なっ」
「お言葉ですが、リーダー。そいつは俺の合図以外で動いていません」
ダークウルフが告げた。
「じゃあなんで嘘なんか」
「すみません。あの場はああして済ませた方が混乱を招かないかと思って」
「そいつの判断は正しいです、リーダー。下手に口を噤むと、却って我々に明確な殺意があったのではないかと疑われてしまう……関係を取り持つ為なら致し方ないことかと」