第七章



彼の目線に釣られてそちらを見るとちょうど店員が頼んだものを運んでくるところだった。ロックマンの側にはブラックコーヒーとフレンチトースト、一方でルーティの側にはほんのり苺の香りがするココアとハムと玉子のサンドイッチ……

「僕が子供だって言いたいの?」
「童心を忘れないのは決して悪いという意味ではないよ」

上手く丸め込まれた気がする。コーヒーを熱い内に啜るロックマンを不服そうに見つめながらカップを手に取ってココアを口に含んだが思わず「あちち」と声を洩らして小皿に戻してしまった。

うう。格好がつかないなぁ。

「そういえば」

ロックマンが口を開く。

「何故外出の誘いに?」

身構えてはいたがやはり訊かれたか。

ルーティが口を噤んで視線を背けた先に答えはあった。男性客が広げた新聞の裏面にでかでかと記載された記事。


あれはもう。一週間前の。


生存者がいないという話ではなかった。

指で数える程度の生存者は口を揃えてあの日起きた恐ろしい出来事について口にする。いつもと変わらない空が風が人の声が絶望に塗り替えられる瞬間を。
 
 
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