第七章
耳を劈く悲鳴と。想像を絶する痛みと。
見せつけられるようにぼとりと目の前に落とされる誰かの腕。それが他でもない自分のものだと認識するのは早く。
踏み躙られた正義の不幸な有り様に拒むように視界は程なく閉ざされて。
身に染み付いた絶望は。
今もまだ。
「隊長」
はっと顔を上げた。
「大丈夫ですか?」
心配そうに資料を胸に抱えて訊ねるのは双子軍師の妹。思えば彼女も兄を含めて辛い思いをさせてしまったな……
「ルフレ」
口を開こうとした、その時。
「失礼します」
ノック。声を掛けたが一拍子置いて扉を開いたのはカンナである。
「どうしたんだ」
「お客さまがいらっしゃってます」
ルフレは振り向いた。
「カムイさん。今はこのフォーエス部隊自体が活動を休止し本部にも面会謝絶を伝えておいたはずです」
「それが」
説明をする彼女の後ろから此方の様子を遠慮がちに窺うかのように影。
「どうしても今日この日に隊長にお会いたいと仰っていて……」