第一章
他にある薬品の匂いが鼻につく部屋とはまた違う。
壁燭台の火の明かりがぼんやりと灯す、煉瓦造りのこの部屋は両開きの扉から奥の玉座にかけて赤い絨毯が真っ直ぐと手招くように敷かれている。
――王の間。そう例えるに相応しい場ではないだろうか。
「ああ。成功したよ」
スピカは少し不貞腐れたように言った。
「……あはっ。その様子じゃ叱られちゃった?」
察しろとばかりに、睨み。
「あちらの部隊の隊長様は相変わらず正義感に溢れていらっしゃる」
戯けた言い回しで片割れが言うとその隣で赤髪の少年がくすくすと笑った。
「マスター様。クレイジー様」
跪いた姿勢でダークファルコが口を開いた。
「お戯れはその辺にして。そろそろ宜しいでしょうか」
はたと笑う声が止む。
「……なに? 何か面白いことでもあった?」