第六章
くすくすと笑う声。
「元気?」
からかうようにして訊ねる電話の相手は間違いなくクレイジーだった。
「ど、どうして」
「うん?」
此方の言い分を分かっていながら惚けて聞き返す。電話の向こう側でにやついているのが手に取るようにして分かった。
「だってこの電話は」
「――ロックマンに繋げたはず?」
ぎくりと肩を跳ねる。
「あっははは! 大丈夫だよ。ちゃんと電話変わってあげるから」
言葉を挟む間もなく身動ぐ音が聞こえてきた。草地を踏む音に続けて息遣い。
「隊長さん。お友達から電話だよ?」
「ロックマン!」
すかさず声を上げた。
「今何処にいるの!」
「っ……う……来てはいけない……」
何かあったんだ。それは初めクレイジーが電話に応答した時点で明らかだったがそうではなく彼の発する声は息を繋ぐのも精一杯なほど苦しそうで。
「場所を教えて、すぐに行くから!」
「……っ、地上界の……」
「――はいそこまで」
頼みの綱は取り上げられた。直後に呻く声が遠く聞こえてルーティは携帯を強く耳に押し当てながら声を上げる。
「ロックマン!」
「あーもーうるさいなぁ。ちゃんと無事だったでしょ?」
心底鬱陶しそうな声にくっと奥歯を噛み締める。
「ロックマン達に何をしたんだ!」