第六章
……焦るな。考えるんだ。
今現在動ける隊員で出来る全てを。
「救出を優先する!」
ロックマンは左腕を差し向ける。間を置かず手のひらが砲口の内側へ引っ込んだかと思うとその奥で青白い光が膨張していき放たれた。けれど狙いはクレイジーではなく二メートル先の前方の地面。
砂塵が舞い上がる。計算された風向きにより薄茶色の砂塵はクレイジーの視界を妨げて。咳き込むハルに一度気を取られたが奇襲を仕掛けられたのはその直後。目前の砂塵を勢いよく突き破って。
現れたのはミカゲだった。どういう原理で形として留めているのかは知れないがともかく苦無を模した水を手に単独で仕掛けてきたのである。腕を引いて払う、一撃を身を引いて躱したが子供を抱えていては鈍る。惜しくも掠めてはらり舞い落ちる前髪の毛先に分が悪いと判断してクレイジーは蹴りを繰り出す。
狙い通りミカゲが後方へ飛び退いたところで首根っこを掴んでいたハルを振り向きざまに投げ捨てる。何も考えずに解放したのではない、その動作の際に生じるであろう隙を狙って飛び出してきていたトレーナー目掛け投げつけたのだ。
「きゃあっ!」
砂塵は依然として晴れない。
だからといって。
「……気付かないとでも思った?」