第六章
だが、不意に。
クレイジーが変化に気付くのとそれまで周囲を覆い隠していた砂煙を突き破り、青白い光を纏う二メートル程の弾が地上から放たれたのはほぼ同時だった。
目前へと迫るそれを見据えてその場から動かず程なく直撃。今度はクレイジーが黒煙に巻かれる形となったが当然のこと手応えといったものを感じられない。
ロックマンは浅く呼吸を繰り返しながら頬に付着した煤を手の甲で拭った。何も先程の攻撃、躱したという話ではない。
己の装甲に物を言わせて全弾受け止める覚悟で敢えてその場から動かずに返しで最大出力の一撃を放ったのだ。
ある程度覚悟はあったが実際受けたのは全弾ではなく流石のロックマンといえど安堵の息が漏れる。だが今の攻撃で曖昧だった推測に確信が持てた。
……彼らは。
殺すつもりではあったとしても実際には俺たちを殺さない。
早い話が弄んでいるという結論に至るがあながち間違ってもいない。一気に畳み掛ければいいものをそうではなくひとつふたつとじわじわ潰してきている辺り、相当な余裕が見られる。
自身の能力に対する絶対的な自信。
程なく黒煙を吹き飛ばしたのは彼を囲う薄い赤色の障壁だった。だがしかしここまでの流れは読み違えていない。