第一章
「腕を見せろ」
また突拍子もない質問だな。
「はい」
何を聞いているんだとじっとり湿気を含んだような目で見上げていたその間ダークファルコは何を躊躇うことなく元着ていたジャケットを脱いだ。
その下はタンクトップなのである。
「……宜しいでしょうか?」
ダークファルコは笑みを崩さず訊いた。
「ああ」
「やれやれ。まさかここにきてセクハラを受ける羽目になるとは」
それ見たことかとルーティは視線を飛ばす。が、ウルフは動じていない。
「……ではまた」
ダークファルコはジャケットを着るとにこりと笑って裂け目の奥へ。
……最後まで残っていたダークウルフは此方に一瞥くれるとひと言も発することなく背を向けてその先に足を進めた。程なく。裂け目は閉じて跡形もなく。
「何がしたかったの?」
ルーティは怪訝そうに訊ねた。
「……いや」
ウルフは一度小さく口を開いたがまた閉じて、それから。
「何でもない」
膨れるルーティを背に、食堂を後にした。