第六章



そのまま。振り回すでもなく腕を引いてクレイジーは自身の左後ろの地面に叩きつけるようにして解放した。目前で繰り広げられる光景には流石のロックマンといえど内心ぎくりとするものも覚えたがこの状況下では狼狽えるはずもなく。

間を置かずクレイジーの背後からは剣を腰に据えたルキナが突きを、正面からはロックマンが足払いを繰り出した。

だがそれさえもクレイジーは地面を軽く蹴って跳び上がり足払いを躱すその最中宙で体を捻って剣を握るルキナの手に目掛けて回し蹴り。当然剣は手放す結果となり目を開くルキナを差し置いてクレイジーは更に体を捻り一回転、そして。

「ルキナ!」

仕上げの蹴りは右足ではなく左足で押し出すようにして繰り出された。反動を利用してクレイジーは宙返りしつつ上昇、頭が地面を向いている頃、真下のロックマンを視界に捉えると自身の足下に赤い魔方陣を一瞬にして展開させて。

誰かが声を上げる間もなく魔方陣から中央にいるクレイジーを避けるようにして湾曲しながら黒い矢印のような尾を魔方陣に繋いだ光芒が幾つも飛び出した。

ロックマンがはっと顔を上げたと同時に突撃、砂煙を巻き上げる。

その一部始終を見届けても尚依然として逆さの状態のまま浮遊するクレイジーが景色を見下すが変化の兆しは見られず。
 
 
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