第六章



「……!」

覚悟はしていたが。

其処には無傷で紅い目をもたげる標的の姿があった。彼の半径二メートルを囲うように薄い赤色の障壁が張られている。ここで防壁ではなく障壁と表したのは攻撃を阻んだそれの表面に、時折小さな赤黒い閃光が跳ねていたからだった。

恐らく兄の扱うものとは異なり破壊神の名に相応しく受けた攻撃を圧倒的防御力により阻むのではなく同等かそれ以上の攻撃で打ち消すといったもの。

迂闊に触れられないが幸いにも彼は防御より攻撃を重視する。

「、隊長!」

予想通り障壁が消失したと同時に砂煙を巻き上げて地面を蹴り出した。真っ直ぐ此方を狙い向かってくる標的を見据えて息を呑んで構える。

援護は任せたと言うより早く引いた拳の一撃が顔面に襲ってきた。すかさず受け止めたがそれを知って引くのも早い。

次いで飛んできた蹴りを腕で庇ったが次の瞬間には反対側の脚による回し蹴りが飛んできていた。既の所で顔を逸らし躱したがあまりの速さに風が刃と化し頬に赤の一線を薄く引いて。

「っ、」

次の蹴りを姿勢を屈め躱した直後。

跳び箱のような要領でロックマンの後ろから背に軽く手をついて跳び越えたのはパックマンだった。目前のクレイジー目掛けて素早く蹴りを繰り出したが当然のように見切られ足首を掴まれる。
 
 
39/58ページ
スキ