第六章
……がたん、と。
何処かで歯車の嵌る音がして。
「くっ」
次の瞬間半径五メートル程の魔方陣が不規則に地面に浮かび上がった。その範囲から脱するべきだと即座に気付いたものの実際範囲内からの離脱に成功したのは凡そ半数。直後魔方陣が紅い光を発すると離脱に失敗したメンバーの足首から太腿半ばにかけて、そして急ぎ空中に飛び出たブラピさえ背中に広げた黒の両翼に荊の形を模した赤い光が絡みついて。
「いい気味」
赤い荊は捕らえた獲物を逃すまいときりきり締め付けてくる。
「おあつらえ向きに僕が二番目に好きなこと教えてあげよっか」
クレイジーは立てた人差し指をあざとく唇に添えて。
「……それはね」
足下に失せたはずの魔方陣が蘇る。
「動けない惨めな虫けらを存分に甚振り殺してやることだよ」
深紅に沈んだ瞳をもたげて左腕を払うと足下の魔方陣の四方に重なるようにしてひと回り小さな魔方陣が浮かび上がり、その中心から紫色の光を妖艶に灯すエネルギーの柱がそれぞれ現れた。
クレイジーは払った左手の先にあったその内のひとつを手に取ると慣れた手付きでくるくると回転させて。
「……それじゃ、楽しませてね?」