第一章
黒の斬撃が虚空を斜めに裂く。と、紫の空間がその奥に覗かせた。
「もう行くの?」
「まあな。こっちも色々あるんだよ」
珍しいこともあるものだ、とルーティは率直に思った。
重度のシスコンと逆評判である彼がまさか愛する妹と顔も合わせずあちらへ戻ってしまうなんて――ま、ダークシャドウといえば敵対組織『亜空軍』に所属する団体なのだし詮索をかけたところで口を噤むのがオチだろう。
「そっか。体に気をつけてね」
ルーティも執拗に問い質すような真似はしなかった。
敵とは一概に言っても、大事な友人なのだ。
「そっちもな」
スピカはにっと笑って誰より先に裂け目の奥へ足を踏み出した。
続け様、ひょいと飛び越してダークフォックス。
「それでは」
ダークファルコが一礼した時だった。
「おい」
……物事が連鎖するものだとはルーティもその時思ってもみなかった。
「何でしょう」
ダークファルコは変わらぬ態度でにこやかに返す。