第六章
次の瞬間だった。
「っ、!」
はためくマントを掴まれたと同時力強く後方へと引かれて。その瞬間標的の居場所は掴めたが既に遅く。
その力に抗う間もなく体ごと引っ張られ足が浮く。勢いに乗せて一回転、ぐんと振り回されたのち不意にマントを手放し解放を許されたかと思うと。
「かッ!」
容赦ない前蹴りによる一撃が今まさに無防備と化していたルキナの体の側面へと深く打ち込まれた。咄嗟に防御の構えはとったがそれさえ読み切っていたようでルキナの体は数メートル先で一部始終を目に呆気にとられていたロゼッタにその正面から衝突してしまう。
「……だからさぁ」
確かに背後を捉えたはずなのに。
「無駄だって言ってるじゃん」
体を大きく開き大の字のような形となるヨガで曰く『英雄のポーズ』で攻撃を繰り出すトレーナーだったが振り向きざま背を反らされ躱された。次いで拳を握り上空から降下するリュウを視界に捉えて瞳が深紅に瞬く。
「ぐあッ!」
刹那。クレイジーの半径二メートル程の範囲に薄い赤色の半透明の障壁が発生し二人を弾き飛ばした。
小さく息を吐くその最中またも背後から距離を詰めていくのはハル。
クレイジーはゆっくりと振り返った。