第六章



「……!」

差す影に見上げるとまるで蝶のように軽やかに宙を舞う標的の姿があった。だが空中に出たならば好都合、そう大きくは身動きがとれない。

それは知らせずとも心得ていたようですかさず両側からカムイとカンナの二人が飛び込んだ。それぞれ構えた剣を大きく振り払い振り下ろす。けれど確かに捉えたはずの標的は一瞬にしてその場から姿を消失し剣は虚しく空を斬って。


「はい残念」


カンナは目を開く。とんと肩にその手を置いて後ろから囁いた声は紛れもなく。

「ッか、」

鈍い音が体全体に響いた。背後から押し出すように乗せた両足で蹴り出されたカンナの体は正面で待機していたカムイに勢いよく衝突し巻き込んで墜落。

蹴り出した反動を利用し空中でくるっと後転したクレイジーは難なく着地をこなしたが直後息つく間もなく姿勢を屈めて地面を蹴り出す。赤の瞳が見据えるその先には――ベヨネッタ。

「もう来たの?」

それまで咥えていたロリポップをリップ音を立てて解放し、後方へ放り投げて。

「……悪い子にはお仕置きが必要ね」
 
 
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